冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「リリー王女、ようやくお会いすることができ光栄です」
無事にグラスゴーの国境を超えラフバラに帰還したリアムは、連れ帰ったリリーとともにラフバラの現国王陛下のもとを訪れた。
ラフバラの現国王・ルシアスは、見た目は三十代前半の朗らかな笑顔が印象的な美男であった。
ルシアスに負けず劣らずの美男である弟のリアムと並ぶと、あまりの美しさに目が眩みそうになるほどだ。
「無事に任務も完了し、このあとエドガー国王の身柄も正式にラフバラへ引き渡される手筈となっております」
事の顛末をリアムから報告されたルシアスは、「そうか」と頷きニヒルな笑みを浮かべてみせた。
「エドガーに対するグラスゴー国民の不満は限界に達していた。軍の兵士たちも尊敬する宰相が戻り、ようやく統制が取れ、すぐに落ち着きを取り戻すことだろう」
ふたりのやり取りを覗いながら、リリーはラフバラへ帰還するまでの間にリアムから聞かされた話を思い出していた。
そもそもリアムがエドガーの要求通りに、グラスゴーへ単身で向かったのは、エドガーの油断を誘うためだったらしい。
本来の目的は地下牢でリアムが説明した通り。エドガーへ、ルシアスが用意した書状を届けることではなく、王宮内のどこかに幽閉されていたグラスゴーの宰相を救い出すことにあった。
そのためにリアムは以前から、ラフバラの聖騎士団の隊員の数名をスパイとして、グラスゴーに送り込んでいたのだ。
ロニーも、そのひとり。
そうしてリアムはエドガーの手により捕らえられたあとも、そのスパイたちの手を借りてすぐに地下牢から出ると、今度は宰相探しのために王宮内で暗躍していたというわけだ。
無事に宰相を解放し、ルシアスに託されていた密書を届けたリアムの任務は完了。
リアムの身を案じたと見せかけ、ラフバラ国王であるルシアスが送り込んだダスターを始めとする援軍は、目くらましのひとつだった。
「そして、大変言い難いのだが……。リリー王女のお父上であるウォーリック国王の処遇も、厳しく検討しなければならない」
不意に話を振られたリリーは、ハッとして俯いていた顔を上げた。
リリーの父であるウォーリック国王も、あのあと地下牢から出されてエドガーとともにラフバラに連行されることは、既にリアムからも聞かされていて、リリーも承知はしていたのだ。