冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「冷酷無比の騎士団長を貫くリアムを、私は心の片隅で心配もしていたが……今、ふたりの幸せな様子を見られて嬉しいよ。リリー王女、リアムのことをよろしく頼む。ふたりの婚姻については、リリー王女の無事を世に知らせるとともに、アイザック王子も正式に認めてもらうこととしよう」
そうして今後のことについていくつか話をしたあとで、リリーたちはラフバラの王宮をあとにすることとなった。
* * *
「おかーたま! おかえりなさいっ!」
「オリビア……っ」
その日、リリーがリアムとふたりで邸に戻れば、ふたりの帰りを待っていた面々が両手を広げて出迎えてくれた。
オリビアはリリーの腕の中にいの一番に飛び込むと、温かい母の胸に甘えるように頬を寄せる。
「オリビア……寂しい思いをさせてしまって、ごめんね」
小さな身体を力いっぱい抱きしめれば、今さら【無事に帰ってこれた】という実感が湧き、涙がこぼれ落ちそうになった。
「おかーたま。おでかけ、おしまい?」
「ええ。もう、どこにも行かないわ。これからもずっと、お母様はオリビアと一緒にいると誓うわ」
今度こそ、決して離れたりはしない。
リリーがそんな想いを胸に誓いを立てれば、オリビアはとても嬉しそうに笑って再びリリーの胸に頬を寄せた。
「……オリビア」
と、そんなふたりを後ろで見守っていたリアムが一歩前に出る。
オリビアはリアムの影に気がつくと、リリーの腕の中でゆっくりと顔を上げた。
「あれ……? おめめ?」
オリビアは眼帯をしていないリアムを初めて見て戸惑っているのか、ただジッと不思議そうに、彼の顔を見つめていた。
「オリビア、あなたに大切な話があるの」
その様子を見ていたリリーは腕の力を緩めると、改めてオリビアと対峙した。
そうして呼吸を整えたあとで、穏やかな笑みをたたえてオリビアを見つめる。