冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「彼は……リアムはね、オリビアのお父様だったのよ」
「おとーたま?」
「ええ。これまで事情があってあなたと会うことができなかったのだけれど、お父様はね……。お母様と同じくらい、あなたを愛している人のことよ」
リリーの話を聞いていたオリビアは、一瞬なにかを考え込むそぶりを見せてから、再び静かにリアムを見上げた。
そんなオリビアと視線を合わせるように、リアムがそっとしゃがみ込む。
するとオリビアは、自身と同じオリーブ色をしたリアムの瞳に気がついたのか、「あっ!」と小さく声を上げて、リアムの右目を指さした。
「おかーたまと、オリビアといっしょ!」
「……ええ、そうね。同じね」
「おとーたまと、おかーたまと、オリビアと、みんないっしょ?」
「そうよ、オリビア……。私たちは、もうずっと前から、繋がっていたのよ……」
言葉と同時にリリーの瞳から、温かな涙の雫がこぼれ落ちた。
これまでずっと、オリビアには寂しい思いをさせてしまっていた。
本来ならば父と母が揃って愛情を注ぐべき我が子に、父という存在の温もりを知らせず、これまでの月日を過ごしてきた。
「……おとーたま?」
と、オリビアがリアムのことを小さく呼んだ。
それを聞いたリアムは腕を伸ばして小さな身体を抱き寄せると、自身の胸に慈しむようにそっと収めた。
「ああ、俺が、きみの父親だ。これまでずっと、会うことができなくてすまなかった。でもこれからは、ずっとずっと一緒にいよう。俺がオリビアも、オリビアのお母様のことも守るから」
「……っ」
そうしてリアムはオリビアだけでなく、リリーの身体も抱き寄せた。
温かく逞しい腕はもう二度とふたりを離さないと言わんばかりに愛情深く、その腕のぬくもりと幸せに、リリーの目からはまた大粒の涙がこぼれ落ちた。
✽ ✽ ✽
「どうやら、眠ってしまったようだな」
その晩、オリビアはリアムの部屋で寝る間際まで楽しそうにはしゃいでいた。
オリビアはリアムを父と呼べることが嬉しくてたまらないと言った様子だったが、気がつくと糸が切れたように静かになり、今は柔らかいシーツに頬をうずめて眠っていた。