冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ふふっ。子供って、本当に不思議。さっきまでハシャイでいたと思ったら、こうして突然、予告なく眠ってしまったりするのよ」
スースーと寝息をたてるオリビアの頬を撫でたリリーは、今度は改めて、窓際に立つリアムのそばまで歩を進めた。
「それで……あなたには、いくつか聞きたいことがあるのだけれど」
オリビアを起こさないように努めて小さな声でリリーがリアムに声を掛ければ、リアムはそっとリリーの腰を引き寄せた。
「オリビアを起こしてしまうと可哀想だ。バルコニーで話そうか」
言いながらリアムはリリーの肩にショールをかけると、バルコニーに続く扉を静かに開けた。
リリーが手すりに手を置けば、そんなリリーを後ろから抱きしめるようにしてリアムがそっと包み込む。
近すぎる距離にリリーは頬を赤らめたが、リアムはそんなリリーの反応をどこか楽しんでいるようにも見えた。
「……余裕なのね」
「いや、今からきみに話すことは、どこから話せばきみに誤解なく伝わるかをとても悩んでところだ」
そう言うとリアムはリリーの額にそっと口づけた。
チュッ、と小さく音を立てて離れた唇は名残惜しそうに、今度はリリーの耳元へと寄せられる。
リアムはリリーに尋ねられなくとも、リリーがこれから自分に何を聞こうとしているのか悟っている様子だった。
「まず、三年前。あの場所できみと初めて話したとき、俺は今のロニーのように、ラフバラ聖騎士団の隊員として、ウォーリックの王宮内にスパイとして潜入している最中だった」
「あなたが、スパイに?」
そうして実際に、リアムはリリーが尋ねたかったことを話し始めた。
リアムの話では、こういうことだ。
あの頃、リアムは言葉の通り、スパイとしてウォーリックの国内に潜入していた。
ウォーリックの衛兵を装っていたのも、そのためだったのだ。