冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「きみを母と呼ぶオリビアをひと目見た瞬間、すべてを察した。きみはオリビアを守るために、自身を死んだことにして、あの場所に身を潜めたのだと──」
そのあと、リリーから事情を聞き、想像は確信へと変わった。
リアムのオリビアを見る目が初めから優しかったのも、オリビアにうさぎのぬいぐるみを買って帰ってきたのも、すべては愛する娘に何かできないかというリアムの父としての想いからだったのだ。
「同時に、これまでのきみの苦労を想像すればするほど、真実を伝えられなくなった。今まで、きみひとりに不安な思いをさせてばかりですまなかった。オリビアを守り、産み育ててくれて本当にありがとう」
「リアム……」
「これまでできなかった分も、これから、ふたりのことは俺が守り、支えていく。リリーとオリビアは、何物にも代えがたい、俺の愛する大切な家族だ」
リアムの熱い言葉に、リリーの目には涙が滲んだ。
オリビアを産み育ててきた約二年半、一度も泣いたことなどなかったのに、彼と再会してからは泣いてばかりのような気がする。
「これからは父として、オリビアにも認めてもらえるように善処する」
真面目なリアムの言葉に、リリーは涙を浮かべながら小さく笑った。
「ふふっ。そしたらまずは、アイザックお兄様を超えなければならないわね」
「アイザック王子を?」
「ええ。オリビアはアイザックお兄様が大好きで……。お兄様を見ると、私を見つけたときのように両手を広げて駆けて寄っていくのよ」
それはリリーを置いて去ったリアムへの、ほんの少しの報復のつもりだった。
けれどリリーのその言葉を聞いたリアムは眉間に深いシワを寄せ、長いまつ毛に縁取られた瞼をそっと閉じてしまう。
「……俺は将来、オリビアを嫁に出すつもりはない」
「え?」
「アイザック王子、か。そうだな。では次に会ったときには、今回の件でそれなりの責任を取ってもらうことにしよう」
「ちょ、ちょっと待って、リアム……! 今のはほんの冗談で──んんっ!」
と、慌てて弁明しようとしたリリーの唇を、リアムの唇が乱暴に塞いだ。
噛みつくようなキスはリリーに抵抗の隙を与えず、あっという間にリリーの身体の力までも抜いてしまった。