冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「リリー様は、覚えていらっしゃいますか? ほら、毎年、豊穣の女神マイアの祭りにあわせて、孤児院にプレゼントが贈られてきていたことを……」

「ええ、もちろん。名も無き贈り主様からの、ご支援のことよね」

「はい。当時は、誰から贈られてきているのか、俺もさっぱりわからなかったんですが……。リリー様が亡くなられたという噂を聞いた翌年、俺は贈り主様の使者を捕まえることに成功したんです」


 ロニーの話を聞くと、つまりはこういうことだ。

 ロニーは地下牢でも言っていたとおり、リリーの訃報を聞き、彼女の意志を継ぐことを決意した。

 平和な世を作るために尽力しようと考えたということだ。

 そこで、どうにかしてその足掛かりを見つけたかった。

 そんなとき、偶然プレゼントを届けに来た、名も無き贈り主の使者を見つけた。

 ロニーはその使者に素直に自分の思いを伝え、どうにかして贈り主に取り次いでもらえないかと頼み込んだということだ。


「そして、その使者さんが連れて行ってくださったのが、リアム様のところだったんです」 

「リアム……?」

「はい、そうです。つまりですね、毎年孤児院にプレゼントを贈ってくださっていたのはリアム様で、リアム様の命を受けて孤児院に贈り物を届けに来ていたのが、この邸の使用人頭を務めるローガン様だったのですよ」

「え……!」


 思いもよらない事実を知ったリリーは、驚きのあまり声を詰まらせた。


(いつかお会いしたいと思っていた【名も無き贈り主様】が、まさかリアムだったなんて、そんな夢のような話があるだなんて……)


「リリー様は、本当に知らなかったんですか? 俺はてっきり、リリー様はそれを知って、リアム様を好きになったのかと思ってました」


 続けられたロニーの言葉に、リリーはブンブンと首を横に振った。

 
< 159 / 169 >

この作品をシェア

pagetop