冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「オリビアに、お父様と結婚したいと言われたんだ。だが、そのオリビアの純粋な気持ちを、俺は無下にしてしまった」
「無下に?」
「ああ。俺はリリーと結婚していて、リリー以外を妻にするつもりはないし、女性としては生涯リリーしか愛せない。だからオリビアとも結婚はできないと、そう答えたら、先ほどの状況のできあがりと言うわけだ」
言いながら、リアムは「ふぅ」と悩まし気な息を吐いた。
オリビアがここに来たばかりの頃、オリビアの中での男の一番は、リリーの兄であるアイザック国王だった。
それは仕方がないことだと、リアムは頭ではわかっていたが、どうにも不愉快でたまらなかったのだ。
だからこれまでの月日、リアムは任務の合間を縫って、少しでもオリビアと触れ合える時間を確保した。
もちろんそれでも足りないくらいだとリアムは思っていたが、先程ついにオリビアからプロポーズを受けるまでになったのだ。
「本当は、オリビアから結婚したいと言われて嬉しかったんだ。だが、俺が融通が効かないばかりに、オリビアの心を傷つけてしまったかもしれない」
思わずと言った様子で息を吐いたリアムは、らしくもなくリリーの肩に頭を載せた。
「ふふっ、そういうことだったの」
するとすぐに、リアムの耳元で甘い吐息と鈴の転がるような声が聞こえた。
「……笑ってくれるな」
「ごめんなさい。でも、ふたりのやり取りを想像したら、なんだか可笑しくって」
クスクスと笑みをこぼすリリーはただ笑っているだけなのに女神のように美しく、ほんのりと色づいた白い肌はどれだけ触れても飽きることを知らなかった。
ドクン、と自身の鼓動が脈打ったことに気づいたリアムは、不意にリリーの肩から顔を上げた。