冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「それできみは、これまでずっとここでこの子とふたり、身を潜めていたということか」
「……ええ。でも、それも今日までよ」
「今日まで?」
「そうよ。ウォーリック王国は今、私の過去の身勝手のせいで危機に直面している。だから私はこれからお父様を説得して、グラスゴーのエドガー国王のもとへと交渉に向かおうと思っていたところだったのよ」
「エドガーのもとへ、だと……?」
リアムには、嘘偽りは通らない。今、そう思うのは、リアムの持つ雰囲気がこれまで出会ってきた人間の誰よりも精悍であったためだろう。
だからリリーは、今ある真実の有りのままを、リアムに打ち明けることにした。
「私の身ひとつで、ウォーリックの命運が決まるのよ。だから、無理を承知の上なのはわかっていながら、貴方にお願いしたいことがあるの……。どうか、この子は……オリビアとソフィアだけは、見逃してくださいっ。そのためなら私は、エドガーをいかようにも説得してみせると誓うわ! ラフバラに不利にならないよう、お父様やアイザックお兄様にも話をすると約束するから……!」
リリーは、焦りと不安で混乱していた。
(こんなこと、冷酷無比と言われる騎士団長が受け入れてくれるとは到底思えないけど、今の私にはこうする他に選択肢がないわ)
今、オリビアとソフィアを守らねばという思いだけが、リリーを真っすぐに突き動かしていた。
けれど、そんなリリーを見つめるリアムの表情は、段々と険しいものへと変わっていく。
「……そんなことを、俺が許すはずがないだろう」
「え……?」
「リリーを、エドガーのもとへなど絶対に行かせるものか」
突然、低く唸るような声を出したリアムを前に、リリーは思わず目を見開き、肩を揺らして固まった。