冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 





「これは……どういうことなのかしら」


 リアムの指示のもと、ラフバラ聖騎士団がリリー一行を連れ帰ったのは、ラフバラの街はずれにある白亜の邸宅だった。

 それは緑の生い茂る木々の中に建つシンメトリーの塔屋が美しい邸宅で、たとえば五人で住んでも不自由なく暮らせるだけの広さと居住性は兼ね備えているように見えた。


「リアム様からのご指示で、皆さまをこちらにご案内するようにとのことでした」


 戸惑うリリーにそう説明した騎士団の隊員は、その後リリーたちから離れると紺色の執事服を着こんだ五十前後の男性に何かを口添え、早々に邸を去ってしまった。


「皆さま、長旅で大変お疲れでしょう。私はこの邸で使用人頭を務めさせていただいております、ローガンと申します。これから、どうぞよろしくお願いいたします」


 そうして何故かリリーたちは、ローガンと名乗った執事服を着た男に、客人のように扱われることとなった。

 玄関ホールに入れば正面には二階に続くエレガントなサーキュラー階段があり、開放的な吹き抜けには品の良い、きらびやかなシャンデリアが飾られている。

 リリーが暮らしていた王宮のような豪華絢爛さはないが、隅々まで掃除が行き届いており、空気も気持ちよく澄んでいた。


「お部屋は、(あるじ)が戻られるまでは、仮としてこちらとこちらをお使いください」


 ローガンがリリーに用意したのは、普段はゲストルームとして使われているらしい一室だった。

 ソフィアはその隣の部屋を用意されたのだが、リリーとオリビアを守るのが侍女である自分の務めと申し出て、結局その日はリリーたちと同室で過ごすことになった。

 
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