冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「お願い……お兄様を、疑わないで」


 美しいオリーブ色の瞳に涙がうかんだ。

 リリーの口から搾り出された願いを聞いたリアムは、ドクンと鼓動が跳ねるのを感じていた。

 いつの間にか、リリーが羽織っていたショールは足元に落ち、月明かりが雪のように白い肌をより繊細に魅せている。

 リリーは兄の身を案じるあまり、ショールが落ちたことにも気がついていないようだ。

 薄手のナイトドレスに包まれた身体は細く、力いっぱい抱きしめたら折れてしまうのではないかという想像が、リアムの胸を掻きむしる。

 リリーの纏う薔薇のような甘い香りが鼻先をかすめて、リアムは思わず拳を強く握りしめた。

 ──三年前も、そうだった。

 リリーは戦争により傷つく人たちを思い、その心を痛めていたのだ。

 いつだって自分以外の人の身を案じてばかりの彼女は清らかで、高潔だ。

 それが三年前……。リリーと秘密の花園で出会ったときと、少しも変わっていないことに改めて気づいたリアムは感動を覚え、彼女への想いを更に熱くたぎらせた。


「きみは本当に、あのころと変わらないんだな」

「え……?」

「すまない。愛しいきみを前にして、これ以上、触れずにいるのは俺には無理だ」

「あ……っ」


 言葉と同時に、リアムはリリーの身体を力いっぱい抱きしめた。

 滑らかで、手に吸い付くようなリリーの肌に、リアムの熱は増す一方だ。

 対してリリーはリアムの逞しい腕に抱き寄せられ、高鳴る胸の音を聞いていた。


「リリーの願いなら、どんなことでも叶えてやりたくなる」


 熱のこもった言葉に、トクン、トクンとリリーの心拍数も上がっていく。

 血で濡れたリアムの手。本来なら彼の身体を押し返すべきだと頭ではわかっているのに、抵抗する隙をリアムは与えてくれなかった。

 
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