冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「わかった。すぐにリリーをオリビアのもとへと連れて行ってくれ」

「え……?」

「今日はふたりとも、そのままゆっくり眠るといい」


 そうしてリアムは足元に落ちていたショールを拾ってリリーの肩に掛け直すと、とても穏やかな笑みを浮かべた。


「オリビアも、いつもと違うベッドで目を覚したら、隣に母であるきみがいなくて驚いたんだろう。きみも疲れているだろうに、夜更けに呼び出してすまなかった。今すぐオリビアのもとへと行ってくれ」


 リアムはリリーを本当に解放してくれるらしい。

 ここへと来る前は、てっきり〝男女のそういうこと〟をさせるために呼び出したのだろうと思っていたリリーは拍子抜けした。


(彼は冷酷無比といわれる騎士団の騎士団長のはずなのに、どうして?)


 もう、わからないことだらけだ。

 そもそも数々の疑問を晴らすためにも勇気を持ってここへと来たというのに、余計に疑問が増えてしまったような気がする。


「あ、あなたは、私たちをどうする気なの?」


 胸に蔓延る不安をリアムにぶつけたリリーは、ショールを胸の前でギュッと握りしめた。


「俺はきみを、どうするつもりなのかって? ……そうだな。俺はリリーを、自分の妻にするつもりだ」

「……え?」

「だから、ここへきみたちを連れてきた。言っただろう? もう二度と、逃がすつもりはない、と」


 そう言うとリアムは口角を上げて笑ってみせる。

 そうしてそのまま歩を進めて部屋の扉を開けると、リリーを本当にオリビアのもとへと帰してくれた。

 部屋に戻るまでの間も、部屋に戻ってからもリリーの頭の中にはいくつもの疑問が渦巻いたままだ。

 
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