冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(私を、自分の妻にするつもりですって? 本気で言っているの? それともやっぱり、すべては私を欺くための嘘と、政治的な策略なの?)
考えなければならないことは尽きなかった。
けれどその日、リアムの言葉のとおり心身ともに疲れていたリリーはオリビアを寝かしつけながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
* * *
「きゃあ! うさたん! かぁわいい!」
「ん……っ」
そして翌朝、リリーはオリビアのハシャギ声を聞いて目を覚ました。
ゆっくりと身体を起こせばいつ届けられたのか、サイドテーブルの上には白いうさぎのぬいぐるみが置かれていて、オリビアはそれを見つけて騒いでいたようだ。
「これは……」
間違いなく、昨夜、リアムの部屋で見たものだ。オリビアには渡せないとリリーが断りを入れたはずなのに、いつの間に届けられたのだろう。
「これは今朝方部屋を訪ねてこられたローガン様が持ってきたのですよ」
「ローガンさんが?」
「ええ。送り主の名は教えられないと言っていましたが……」
そういうソフィアは心底不思議だとでも言いたげに、白いうさぎのぬいぐるみと――その横に置かれた綺麗なリボンのついた箱へと向けられていた。
「開けてみましょう」
「……はい、わかりました」
結局、不本意ではあるが、一度オリビアの目に入ってしまった以上、ぬいぐるみはオリビアの手の中に。
そしてもうひとつ、置かれた箱の中身を確認したリリーとソフィアは、お互いに目を見張って固まった。
「これは……イヤリング?」
ぬいぐるみと一緒に届けられた小さな箱の中身は、オリーブ色の美しいペリドットの宝石がついたイヤリングだった。
(まさか、これもリアムが――?)
まるで、あの晩に見た隻眼の衛兵の瞳のように美しい、ペリドットのイヤリング。
リリーは、昨夜のリアムの言葉と鼓動の音を思い出して、また大きく胸を高鳴らせた。