冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「本当に……リアムが何を考えているのか、私にはさっぱりわからないわ」


 ぽつりとつぶやいたリリーは、手入れの行き届いた美しい庭で蝶を追いかけている娘のオリビアへと目を向けた。

 リリーたちがラフバラに連れてこられて、早三日。

 リリーたちは相変わらず丁重に扱われ、人質とは思えないほど何不自由ない暮らしをしていた。

 オリビアも、毎朝食卓に飾られる花を見ては嬉しそうにしている。

 うさぎのぬいぐるみは貰った日から肌身離さず、どこへ行くにも一緒にいるほどだ。


「ウォーリックの花園の小屋にいた頃よりも、暮らしは格段に良いものになっているし、オリビアも今のところ、ここでの生活にストレスは感じていないようだわ」


 言いながらリリーは、改めて立派な邸を振り返った。

 何度見ても瀟洒(しょうしゃ)な邸宅だ。

 二階には大きなバルコニーのついた部屋があり、そこは初日にリリーがリアムと話した部屋だと、昨日ローガンが教えてくれた。 


「それに、ここに仕えているものたちは、使用人頭のローガンを始めとして、皆優しく穏やかな人間ばかりだわ」

「ええ……。私たちに害をなすようなものは誰ひとりとしていないようにも思えますし、皆様とても勤勉で、主であるリアム様を尊敬しておられるご様子でした」


 小さく溜め息をついたソフィアは、ここ数日で使用人の数人から、リアムや邸のことについて話を聞いていた。

 この邸に勤めている使用人はローガンを含めて全部で四人。話を聞けば使用人頭のローガンだけが邸内に住み、他は日替わりで邸にやってくるということだ。

 この邸で働いているものはみな、年齢も五十を超えているらいしので、それぞれの負担を減らすために交代制をとっているということだ。

 先も言った通り、全員が全員、皆一様に穏やかで心優しいものばかりだった。

 そして結果として、ここで働くものは誰ひとり、リアムのことを悪く言うものはおらず、皆、主であるリアムを心から尊敬しているようだった。

 当然、主のことを悪くいうものなどいないと言われたらそれまでだが、嘘をついているかいないかの区別くらいは雰囲気で察することができる。

 きっと、彼らは嘘をついていない。そんな彼らの話を聞いたおかげか、ソフィアも初めてここへ来たときに比べると、随分と警戒心も薄れていた。

 
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