冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
リアムの真意は読めない。だけど、もしも彼が自分を利用しようとしているのなら、自分も彼を利用して、オリビアにとって良い未来を選択したいとリリーは打算的に考えてしまったのだ。
オリビアのためならば、リアムの妻になることも厭わない。
ふたりの間に愛などなくてもいいではないか。オリビアさえ笑顔でいてくれたら……リアムの妻になるのも必要な選択だとリリーは思っていただけだった。
「私は、卑怯な人間ね」
苦笑いを零したリリーに、ソフィアは「そんなことはありません」と否定をする。
けれど、リリーの胸はチクチクと針で刺されたように痛んでいた。
(あのときリアムは、まるで私を愛しているようなことを言っていたけど……。結局なにひとつ、彼を信用してもいいという証拠はないのよね)
心の中で唱えながら、リリーは首を左右に小さく振った。
このままでは正しい道など選べそうにない。
やはりリアムとは、もう一度きちんと向き合って話をしなければいけないだろう。
「──あら。オリビア様は、どちらに行かれたのでしょうか」
「え?」
そのときだ。不意に声を上げたソフィアに反応し、リリーは俯いていた顔を上げた。
「今しがたまで、そこで蝶を追いかけておられたのに……」
キョロキョロと辺りを見回すソフィアに倣って、リリーも慌てて周囲を見渡す。
「オリビア!? どこにいるの!?」
つい、今の今まで庭で蝶を追いかけていたはずのオリビアの姿が見当たらないのだ。
目を離したのは、ソフィアと話していたほんの数分。
だが、その数分の間に、オリビアは追いかけていた蝶と一緒に、忽然と姿を消していた。
「も、申し訳ありません、リリー様! 私が目を離してしまってっ」
「いいえ、それを言うなら私もよ……! オリビア、お願い! どこにいるの!? 返事をして!」
狼狽えたリリーは慌てて庭に降りると、オリビアを必死に探した。
その声を聞きつけ、使用人頭のローガンも何事かと驚いた様子で庭へとやってきた。