冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「ど、どうされましたか!?」
「オリビアがいなくなったの! もしかしたら、邸外へと出てしまったのかもしれないわ!」
リリーの言葉に、ソフィアの顔が青ざめる。
「い、いいえ、リリー様。それはないはずです。なぜならこの邸の周辺は、聖騎士団の精鋭たちが見廻っているのです」
「え……?」
と、ふたりを落ち着かせるように、ローガンが小さく息を吐いてから言葉を続けた。
「リリー様たちがこの邸に来られてからというもの、彼らは昼夜問わず、邸から少し離れたところで見回りをしているのです。そのものたちはリアム様から、この邸にはネズミ一匹の侵入も許さぬという命を受けております。ですから、オリビア様が邸から出てきたら、彼らがいの一番に気がつき知らせてくれるはずです」
ローガンの話を聞いたリリーは、我が耳を疑った。
この邸を、騎士団の隊員が見廻っているとは知らなかったのだ。
だが、改めて考えるとリリーたちを人質とするなら、当然の措置には違いなかった。
「……そうだったの。では、やはりリアムは、私達を人質にするためにここへ連れてきたのね」
ふっと、リリーの肩から力が抜ける。
ほんの少しでも、リアムが本当に自分を愛していて、妻としようとしているのでは……などと考えたことが、馬鹿らしくて嘲笑せずにはいられなかった。
「ふふっ、当然よね。こんな私でも、僅かでも利用価値があれば生かしておくべきだもの」
「い、いえ……っ。リアム様は決して、そのようなおつもりではなく、ただリリー様を──」
「ローガン様! たった今、リアム様がお戻りになられました!」
そのとき、使用人のひとりがリアムの帰宅を知らせるためにやってきた。
オリビアを探すことに集中するあまり、主人の帰宅に気づかなかった面々は反射的に振り向いて声のした方へと目を向ける。