冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「どのような手を使ってでも見つける。それが俺のやり方だ」
ゾクリと肌が粟立つほどの冷たい目だった。
それなのに身体の芯が震えるような、香り立つ色気も纏っていてリリーとソフィアはリアムから目が離せなくなった。
「そもそも、オリビアはまだ二歳。どこかへ行くにしても、そう遠くへは行けないだろう」
「で、でも、人攫いだったら……っ」
「それはない。外にいる連中……特に、今日の見回りの責任者は、俺が信頼を置いているひとりだからな」
その男が先程リアムが口走った【ダスター】なのだろう。
騎士団長を務めるリアムが絶対的自信を持って宣言するほど、優秀な男というわけだ。
「外は、ダスターに任せる。俺たちは、邸内をくまなく探してみよう」
リリーに掛けられた声は、たった今、ソフィアへ向けられたものとはまるで違う穏やかなものだった。
ハッと我に返ったリリーが不安げに瞳を揺らせば、リアムはそっと右目を細めた。
「大丈夫だ。この邸は、複雑な造りはしていない。それに俺も小さい頃は、ここでよくかくれんぼをしたものだ。オリビアは、すぐ見つかるさ」
そう言うとリアムはリリーの髪に触れようと手を伸ばした。
けれど、既のところでその手を止めると、何かを堪えるようにギュッと拳を握って、伸ばしかけた手をおろしてしまう。
「……っ、すまない」
黒い革手袋をしているリアムは、一瞬視線を彷徨わせてから、そのままリリーに背を向けた。
「さぁ、行こう」
結局、それ以上、リアムがリリーに触れようとすることはなかった。
リリーもリアムの表情が切なげに歪められたことに気づいていたが、今はいなくなったオリビアを想うことで精いっぱいだった。
✽ ✽ ✽
「どうやら、蝶を追いかけている途中で疲れて、眠ってしまったようで。見た限り、怪我のひとつもしておりません」
リリーたちの心配を他所に、程なくしてオリビアは見つかった。
うさぎのぬいぐるみを抱きしめて眠るオリビアを抱えて現れたのは、リアムと同じ聖騎士団の軍服を纏った、ダスターだった。