冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
 

「そもそも、ここにリリー様たちを連れてきたのも、リリー様たちを大事に思うからこそだと思います!」

「私たちを、大事に?」

「はい。リアム様はこことは別に、王都に別宅を持っているのですが、お母上と過ごしたこの邸は、リアム様にとって特別な場所であることに間違いないんです」


 ダスターの言葉に、リリーはオリビアを探す前にリアムの口から聞かされた話を思い出した。

『俺も小さい頃は、ここでかくれんぼをした』

 あの言葉は本当だったのだ。

 リリーを落ち着かせるための、ていの良い嘘などではなく、リアム自身の話だったということだ。


「リアム様は体裁をつくろうためと、任務のために王都に別宅を持ってはいますが、本宅はこちらの邸だと我々騎士団は認識しています。それは、ゆっくりとお身体を休めたいときには必ず、こちらの邸で寝泊まりをしていらっしゃるからなんです」

「そうだったの……」

「はい。それに、この邸にリリー様がおられることは、騎士団の一部のものたちしか知らされておりません。それは、ウォーリックの姫君であられるリリー様を守るためだと、我々はリアム様から説明を受け、きちんと心得ているんです」


 驚くことばかりのリリーは、難しい顔をして押し黙った。


「今はウォーリックのことや、グラスゴーの件で任務が忙しく、リアム様は別宅で寝泊まりをされていますが……。今も任務の合間を縫って、ひと目だけでもリリー様たちを見るために、ここへ戻ってこられたところだったんですよ」

「え……?」


 ダスターから知らされた思いもよらない話に、リリーは再び目を見張った。


(今の彼の話が本当だとするのなら、リアムがここに戻ってきた理由は、ただ、私たちの顔を見にきただけだということなの?)


 けれどタイミング悪くオリビアが行方不明となり、オリビア捜索という任務をここでもすることになったリアムは、一息つく間もなく王都へと戻っていったというわけだ。

 
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