冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
「毎日お届けしている花も、リアム様がわざわざ花屋に足を運んで、ご自分で選んでいるものなんですよ」
「リアムが……?」
「はい。もうね、その、花を真剣に選んでいる様子が、我々からするとなんとも微笑ましくって。何より尊敬するリアム様に、大切な方が現れたことが我々は嬉しくてたまらないんですよ」
感慨深そうに言うダスターを前に、リリーは思いついたことをそのまま口に出して尋ねた。
「で、でも、リアムは冷酷無比といわれるラフバラ聖騎士団の騎士団長でしょう? それなのに今の話を聞く限りでは、まるで別人みたいだわ。何より彼は、あなたを始めとしたみなさんに、どうしてそんなに慕われているの?」
リリーの問いに、ダスターは一瞬困ったように笑ってからまた頬をかいた。
「確かにリアム様は、いつでも最前線に立ち、自身の手を汚す覚悟で任務を遂行するお方です。けれどそれはすべて、ラフバラの民を守るため。兄である国王陛下を守るためなんですよ。誰かがやらなければならないことを、リアム様はその身を犠牲にしてでも行っているだけなのです」
ダスターの言いたいことは、誰も好き好んで『冷酷無比』になどならないということだった。
「ま、待って。兄である、国王陛下って……」
「ええ。リアム様は、本当はラフバラの第三王子……現国王陛下の腹違いの弟殿なんですよ。でも、リアム様の母君は、もともと王宮に仕えていた使用人で。だからリアム様が幼い頃には王宮にも上がれず幽霊のように扱われ、ここで静かに過ごしておられたと聞いています」
「幽霊……」
「結局、母君が亡くなられたと同時に、王宮に出入りすることを許されたようですけどね。でも、王宮入りしてからも、使用人の息子であるリアム様に向けられる目は厳しくて……。リアム様は〝自分は王位には興味がない〟ということを示すためにも若くして騎士団に志願し、功績を上げて国王陛下の信頼を得て、現在は騎士団長の地位まで上り詰めたというわけです」
思いもよらない話を聞かされたリリーは、今度こそ言葉を失くして固まった。
まさか、リアムが騎士団長でありながら、ラフバラの第三王子だったなどとは知らなかったのだ。