冷徹騎士団長に極秘出産が見つかったら、赤ちゃんごと溺愛されています
(私が、あなたの手は血濡れていると言ったから……)
ダスターに、オリビアには触れられないと言ったときのリアムの表情を思い浮かべたリリーは、またたまらない気持ちになった。
「ほら、リアム様はリリー様たちと邸内を探していたでしょう? で、オリビア様の姿は外では見つけられないっていうことを報告しに行ったときに、リアム様に言われたんですよ」
「そうだったの……」
「はい。え、と……。今日は長いこと話し込んでしまって、すみませんでした。俺はこれから別の隊員と交代して王都に戻りますが、何事もなければ、明後日の夜にはリアム様もこちらに戻られるはずだと思います」
そう言うとダスターは、リリーに深く頭を下げてから邸をあとにした。
温かい風がリリーのドレスの裾を優しく揺らす。
ダスターから聞かされた話は、どれもリリーの心を大きく揺れ動かした。
ざわざわと、木々がざわめいている。
リリーはテラスに立ちすくんだままで自身の胸に手を当てると、しばらくその場から動けなかった。