ベジタブルハンバーガー

「今日、ワイン買っておいたよ」



梨花さんの曇った顔が少し晴れた

よかったね、梨花さん



もぉ梨花さんに会ったらいけない気がした



お幸せに…



「オレ、これからちょっと出掛けるんだ
明日からまた出張だから
キャリー出しといて!」



え…



「あのぉ!
今日、奥さん誕生日じゃないんですか?」


つい言ってしまった



「誕生日…?」



知らなかったの?

夫婦って、そんなもんなの?



梨花さんの顔がまた曇った



「大丈夫…
忙しいから、仕方ないよ」



梨花さん

我慢してる



「奥さんのこと
ひとりにしないでください
ずっと待ってましたよ
あなたのこと」



「大丈夫、私は
気にしないで…」



梨花さん

今の言葉はオレに言った?

それとも旦那さん?



オレは、気になるけど…



アナタは?

旦那さんの顔を見た



「オレが一緒に祝ってもいんですか?誕生日」



あの時みたいに

オレが代われるなら



梨花さんは望んでないかもしれないけど



「お気使いありがとうございます」



別に気なんか使ってない



ただ…

ただ
この人の誕生日を一緒に祝いたいと
思ってるだけ



「誕生日なんて、別にいいよ
用意してなかったし…
だから、大丈夫!」



ケーキ買ってたじゃん



梨花さん、無理しないで

寂しい顔見せなよ



旦那なんだから

もっと甘えればいいのに



気使ってんのは梨花さんだよ



なに?このやり取り


オレが虚しくなるじゃん



「…スミマセン
余計なこと、言って…
…失礼します」



オレはエレベーターに乗った



< 243 / 575 >

この作品をシェア

pagetop