*SS集*お稲荷様のお呼びです!
冷えた外気と微かに暖かい中の空気が混じり合う窓際で、そっと空を見上げた。
くすんだ色の空はどこまでも続いていて、晴れない私(わらわ)の心を映し出しているかのようで嬉しくもないのに無理やり笑みを浮かべた。
笑えば少しは空が晴れてくれるのではないかと、そんな期待を胸にして。
凍える手の平を、はあっと口元で息を吹きかけて温めるが一向に温まる気配はない。
こんな凍える手を取って温めてくれる人も私の周りにはいないことを余計に感じてしまい、くっと下唇を噛み締めた。
だだっ広い御殿で一人暮らすことはもう慣れっこだと言うのに、この場所に誰か訪れてくれるのではないかと思う自分がいる。
そんな淡い期待を胸にしたところで何もならないというのに、まだまだ幼い心を持つ自分に腹が立った。