*SS集*お稲荷様のお呼びです!
私はクラスでも存在感のない、言わばモブという位置にいる女だ。
モブと言っても碧村 舞紀(ヘキムラ マキ)という親が名付けてくれた名前がしっかりとある。
それでも私の日常が何か特別な事が起こるわけでもなく、イケメン達が私のために争ってくれるわけでもない。
ただ高校生活という時間を、主人公にもなれるわけでもなく極々普通に生き抜いていくだけなのだ。
今日も今日とて、何一つ変わらない授業を終えて係の仕事をいきなり教師に押し付けられてそれで終わり。
言われたからにはやらねばならない事を、渋々受け入れて私は帰る支度を整え教室から出ようとした。
「舞紀ちゃん……!」
鞄を担いで廊下へと足を踏み出した私の名前を呼ぶ声が聞こえ、その場に踏みとどまる。
ゆっくりと声の主を探そうと後ろを振り返ると、出席番号一番の少女ーー東 千代さんがそこにいた。