*SS集*お稲荷様のお呼びです!
仲のいい友達と言っても数は限られていて、その子とは別のクラスになってしまった私は今のクラスにはあまり馴染めていない。
それだと言うのに東さんは隔たりというものが存在しないのか、こんな私にも優しい笑顔を向けて話しかけてくる。
その優しさに甘えるように口を開いて、一緒に歩く時間は中々に有意義な時間だ。
共通の好きな物なんてないはずなのに、小さな話題を拾っては東さんは会話を広げていく。
そんな傍から見たらくだらない話を楽しみながら移動し、東さんの住む家へと辿り着く。
和を感じる一軒家に足を踏み入れて、私は小さな声でお邪魔しますと一言そう言って、微かに軋む家の廊下を歩く。
「そこ客間だから中に入って待っててね。私、お茶用意してくる!」
そう言って台所へと向かった東さんの後ろ姿を長めつつ、言われた通り私は部屋へと続く引き戸を開けた。