あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

「何か困ってるみたいだし、声かけてみようか」

未来はそう言い、瑠花も「私も行く」と微笑む。

「榎本、足立、任せて大丈夫じゃけ？」

瀧が心配そうに訊ねる。帆高たちも「何かあったら大変だし、一緒に行こうか？」と言ってきた。しかし、六人全員で声をかけたら相手を驚かせてしまうだろう。

「大丈夫！あたしたちは魔獣使いと魔女だし。何かあったら力を使うよ」

未来は力強く笑い、瑠花の手を引いて歩き出す。瑠花が「先に行ってて！すぐに追いつくから！」と帆高たちに言った。

フードをかぶった人物は、キョロキョロとまだ辺りを見回している。未来たちと同じ旅人だろうか。道案内ならば未来や瑠花の力を使えばあっという間にできる。

「あの、何かお困りですか？」

瑠花がフードをかぶった人物に声をかける。その人物が顔を上げると、美しい緑の目をした黒髪の男性が驚いた目で未来と瑠花を見つめる。しかし、その顔はすぐに優しい笑みに変わった。