あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「僕は旅をしているんだけど、仲間の一人が病気になってしまって……。病院はどこにいるのかな?道案内してくれない?」

「病気なら、私に任せてください。魔法で治せます」

瑠花がそう言うと、男性は驚いた顔をする。未来は「瑠花ちゃんはすごい魔女なんですよ!」と笑った。

「そうか……。なら、こっちに」

男性がクルリと背を向け、歩き出す。未来と瑠花は何の迷いもなしに男性のあとに突いた。男性は人の多い通りからどんどん人気のない道へと歩いていく。

「あの、本当に病気の方がいるんですか?」

ただの旅人がこんな治安の悪そうな場所を通るとは思えない。さすがに未来も不安になってきた。

「ククッ!騙されてくれてありがとう!!」

男性がそう言い、指をパチンと鳴らすと不気味な廃墟などから大柄で怖そうな見た目の男性たちが現れ、未来と瑠花を取り囲む。

「未来ちゃん……!」

瑠花が不安げに未来を見つめる。未来は目の前でニヤニヤと笑っている男性を睨んだ。
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