あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
九　厄災の魔女
「もう寝るね。おやすみなさい」

お風呂に入り、パジャマに着替えた未来はリビングで談笑している兄たちに挨拶をする。

「まだ九時半じゃない。もう寝るの？」

母の問いに未来は「今日は疲れちゃったから」と笑う。今日は学校の授業が終わった後、牧場で牛の出産があったため、バタバタと走り回っていた。

「明日休みなのにお前がそう言うの珍しいよな〜」

兄の言葉に未来は「うるさい」と口を尖らせる。そして、自分の部屋へと向かった。

いつも未来は十一時頃に寝る。この時間に部屋に向かったのは確かに疲れたというのもあるが、これから小説を書くというのもあった。また英美里たちに会えるのだ。未来の胸がわくわくする。

「帆高くんもいるんだよね……」

この前助けてもらった時のことを思い出し、未来の頰が赤く染まる。胸が何故か高まっていった。

「うわぁ〜！何これ！」

未来はベッドに勢いよく飛び込み、足をバタバタ動かす。自分の中にある感情が最近わからない。
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