あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「未来さん、大丈夫ですか?顔がとても赤いです。体調が悪いのでは……」

シトロンに心配され、未来は「いやいや!元気!!」と大げさに笑う。帆高のことを考えてなど絶対に言えない。

「ところで、どうしてシトロンがここにいるの?」

「ああ、ミーナ先生はセーシェルを楽しんでいるんですけど、ビーチで眠ってしまって……。起こすと機嫌が悪くなってしまうので」

話を逸らそうとミーナがいないことを訊くと、シトロンはすぐに答えてくれた。話が変わったことに未来はホッとする。

「もう物語も終わりに近づいてきました。素敵な作品になっていますよ!」

シトロンがそう言い、未来は「そっか」と答える。物語が終わるまでに願い事を決めなくてはならない。願い事も、一緒に小説を書いているメンバーへの想いも、未来はまだ何も決められていない。全てがぐちゃぐちゃなのだ。

「未来さん?」

シトロンに顔を覗き込まれ、未来は「ああ、ちょっとボウッとしちゃった。今日も冒険頑張るよ!」と笑う。
< 115 / 193 >

この作品をシェア

pagetop