あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

「芸術かぁ〜……。俺には無縁の世界だな」

大地がそう言うと、瀧もコクリと頷く。瑠花も「絵が描ける人って羨ましいなぁ」と笑った。

「芸術の街！楽しみだ！」

帆高が今にもスキップをしそうな勢いなので、未来はクスリと笑ってしまう。いつもは大地や瀧が先頭なのに、好きなものがある時には譲れないようだ。

芸術の街は一時間ほど歩いてたどり着いた。その街が見えてきた刹那、未来たちは「すごい」と呟いてしまう。

街の壁には、たくさんの落書きがされて色鮮やかだ。落書きと言ってもふざけて書かれたものではない。太陽に照らされた綺麗な花の絵や、おいしそうなピザやパスタの絵など、じっくりと見入ってしまうような上手なものばかりだ。

「すごい！だから芸術の街なんだ……」

未来はそう言い、壁に描かれた絵を見ていく。まるで美術館にいるような気分だ。そして、未来の隣には帆高がいる。

「こういう画風、すごく好きだな。参考になるよ」