あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
瀧が美術館の入り口のドアを開けると、長年放置されていたせいか、ぶわりとホコリが舞うのが見える。そして、カビ臭い臭いが未来たちの鼻を刺激する。

「うっ……!」

「マスクもないし、これじゃあ探そうにも探せられない!」

瀧や大地がそう言い、未来たちも激しく咳き込む。未来は「ちょっと待ってね」と言い本からシルキーを召喚する。シルキーは家事をしてくれる精霊だ。

「お待たせしました」

十五分ほど未来たちが美術館の入り口で待っていると、シルキーが掃除を終えてペコリと頭を下げる。そしてその姿を消した。

「すごい!新築のお家みたいに綺麗になってるわ」

英美里が声を上げ、大地たちも「探しやすくなった」と笑う。美術館の中は先ほどとは比べ物にならないほど綺麗になっている。ホコリ一つない。

「未来ちゃん、ありがとう!」

帆高がそう言い、未来はドキッとしてしまう。そして慌てて「どういたしまして」と言った。そして花の捜索が始まる。
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