あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

「必要な時は呪文を言って魔獣を召喚しろ。では、今から私はインドネシアのバリ島へ行く」

ミーナはそう言った刹那、未来の目の前から一瞬にして姿を消す。驚く未来に「すぐに仲間が来ますよ」とシトロンも言って姿を消してしまった。

「えっ？ちょ、ちょっと！？ミーナちゃん！シトロンさん！」

小説を書けと言われても、これから何をすべきか未来にはわからない。戸惑っていると、「あの……」と控えめに声をかけられた。

「は、はい」

未来が振り向くと、大学生の卒業式でかぶるような黒い帽子をかぶったワインレッドのコートを着た男子がいた。大きなリュックサックを背負っている。

「僕、村瀬帆高（むらせほだか）って言いますばい。一緒に小説書く人で合ってますか？」

少し恥ずかしそうに帆高が訊ねる。聞き慣れない方言にドキドキしながら「うん！あたしは未来！」と自己紹介をした。

「他の人はみんな会場に行っとるばい！」

「会場？」

「僕たちは悪い魔女を倒す勇者たち。僕らを見送るためのパーティーがあるばい」