あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
エルルカがお芝居のナレーションのように話し始める。すると、映し出される幸せそうな映像が瑠花の母の絶望した表情に変わった。その手には妊娠検査薬があり、赤ちゃんがお腹の中にいる陽性反応を示している。

「瑠花の母は、子どもは瑠花の姉一人だけを育てるつもりだった。仕事を続けていきたいが二人目がいるとそうはいかなくなるからな。しかし、望まない妊娠をしてしまった。その結果、瑠花の母は高校の頃から働くのが夢だった会社を去ることになる。瑠花を堕ろすことを両親に止められてしまったからな。つまり、瑠花は望まれて産まれたわけじゃない。むしろ邪魔な存在だったんだ」

エルルカの淡々とした声が響く。瑠花は強くスカートを握り締めていた。映像は保育園年中ほどの瑠花を映したものになった。どこの家庭にもある夕食の時間だ。

「何だこれ……」

瀧が呟き、未来も目の前に映し出されたものを信じたくなかった。しかし、これが瑠花の過去なのだと思い知らされる。
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