あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
デザートのケーキは、両親と姉のぶんしかなかった。それに対して瑠花が「どうして?」と泣くと「うるさい!!」と両親が怒鳴る。泣き出した瑠花を見て瑠花の姉は意地悪そうに笑っていた。

「ひどい……」

英美里が呟き、未来は肩を震わせて静かに泣いている瑠花を見つめた。笑顔の裏に瑠花はこんな悲しみを抱えていたのだ。それに気付けなかったことが悔しくてたまらない。

それから映し出された映像にも、瑠花が両親や姉からいないものとして扱われるシーンが多く映し出された。

家族旅行の際、瑠花一人だけが祖父母の家に預けられていた。お小遣いもお年玉も、瑠花のぶんはなかった。誕生日やクリスマスに瑠花のケーキやプレゼントはもちろんなかった。

「お前は本当に何もできないんだな。お前を育てていく金が無駄だよ」

「あんたなんか産まなきゃよかった。さっさと高校卒業して働いてお金返してちょうだいね」

「あんたって何のために生きてんの?服も下着も超ダサいよね!このワンピ見てよ。ママにこの前買ってもらったブランド物なの」
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