あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「だが、運命はあまりにも残酷だった。瑠花が気付かぬところで飛び降りたのを見られていたんだ。救急車がすぐに呼ばれ、瑠花の命は助かってしまった」

酸素マスクを付けられ、機械で命をつながれている瑠花を見て全員の目から涙があふれていく。この目を開けた時、「助かってよかった」と一番に言うはずの人が瑠花にはいないからだ。

目が覚めた瑠花を、瑠花の両親や姉は医師や看護師がいる前では心配する家族のフリをしていた。しかし、医師たちがいなくなると「死ねばよかったのに」と吐き捨てる。瑠花の瞳から涙がこぼれ落ちていった。

「瑠花の心は限界に近い。壊れるのも時間の問題。そんな時に瑠花は小説を書くことになり、願いを一つだけ叶えてもらえることを聞かされた。その時、こいつの心にあったのは一つしかなかった」

瑠花とエルルカを囲む風が強くなる。もう泣き止んだ瑠花はエルルカをまっすぐに見つめていた。風に乗って未来たちの耳に瑠花の心の声が響いてくる。
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