あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
六人は並んで街を歩いている。和気あいあいといった空気はなく、未来はこんな雰囲気でいいのかと心配になってしまった。その時、あることを思い出す。

「あっ!そういえばあたし、この小説のあらすじとかわからないんだけど……」

未来の言葉に、「ミーナから聞いてねぇの?」と大地が訊ねる。未来が頷くと瑠花が説明してくれた。

「この世界はとても平和で幸せで満たされていたの。でも、ある日突然現れたエルルカ・ハイドレンシアという魔女によって世界は悲しみや不幸に包まれてしまった。私たちはそのエルルカを倒して世界に幸せを取り戻さないといけないんだ」

「なるほど……。ありがとう!」

未来が笑うと瑠花も優しく微笑む。しかし、六人の間にそれから会話はなかった。

人々が行き交う街を抜けると、隣街へと続く森が現れる。どこか不気味な森に未来は足を止めたくなるが、瀧と大地を先頭にみんな進んでいく。

森の中を進んでいると、未来の見たことのない植物たちが現れる。英美里が「綺麗……」と呟いていた。
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