あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
その時、僕の頬に優しく未来ちゃんの指がふれる。未来ちゃんはこぼれ落ちた涙を優しく拭ってくれていた。その手はとても優しい。

「帆高くん、あたしもずっと会いたかったよ」

未来ちゃんはそう言い、俯く。僕はドキドキしながら「それは友達として?」と訊ねる。聞きたい、でも聞きたくない。二つの気持ちが今さらぶつかっていた。

ずっと未来ちゃんを想い続けていた。でも、現実の僕は小説の中みたいに文字が読めるわけじゃない。地図だってまともに見れない。こんな僕が選ばれるわけない、そう思っていても好きという気持ちは抑えられなかった。

「あたし、馬鹿だからこんなにも待たせちゃった。ずっとこの気持ちが何か考えていたよ……」

未来ちゃんはゆっくりと顔を上げる。その顔は僕と同じように赤くなっていた。

「あたしも、帆高くんのことが好きみたい。こんなに待たせちゃってごめんね」

未来ちゃんがそう言ってくれて、僕が脳内でその言葉を処理していた刹那に未来ちゃんとの距離がさらに近くなる。唇にある柔らかな感触、目の前に広がる未来ちゃんの顔、これってーーー。
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