あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

「まずは、お前が呼び出すことができるその本に書かれた魔獣全てを覚えろ。……一日でな」

「ええっ！？一日！？」

そんなの無理です、と未来が言うと「たわけ！！」とジークに叩かれる。そして未来はジークに睨み付けられる。

「甘ったれるな！エルルカを相手にするということは、中途半端な気持ちでは戦えない！魔獣を覚えることよりも辛いことがたくさん待っておる！覚悟がないのなら今すぐここから立ち去れ！！」

ジークに言われ、未来は俯く。人からどれだけ笑われても明るく振る舞えたのに、今は笑うことさえできない。今、未来の心はジークの言葉に震わされていた。

エルルカの恐ろしさなど、未来にはわからない。この世界のことも小説を書いているというのにわかっていない。それでも、この世界では弱音を簡単に吐いてはいけないのだとわかった。

「すみません。きちんと覚えます」

未来は謝り、ジークを見つめる。ジークの目は穏やかなものに変わっていった。