あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

ジークがいなくなった後も、未来は呪文を唱えてみる。しかし、本が光るだけで変化は何もない。

「どうしてできないんだろ……」

未来は俯き、ため息をつく。すると「榎本さん！」と五日ぶりに聞く声がした。未来はハッとして笑顔を作る。振り向けば帆高たちが立っている。その顔はどこか嬉しそうだ。

「みんな久しぶり！どうしたの？」

未来が訊ねると、瑠花が「私たち、修行が終わったの。こんなに早く習得できるなんてって師範も驚いていたわ」と笑う。瑠花の言葉に未来は「えっ……」と呟き、泣き出してしまいそうになった。まだ未来は一匹も魔獣を出せていない。

「魔法をきちんとコントロールできるようになったから安心してね」と瑠花。

「わ、私もみんなが傷付いたら助ける！」と英美里。

「俺の剣の腕も上がったからな」と大地。

「……弓、使えるようになった」と瀧。

「知識が増えたからみんなをサポートするけん」と帆高。

みんなが笑う中、未来の中に苦しみが生まれていく。うまく笑えているか心配になった。