あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「お前たちには負けねぇ!!特訓したからな!!」

大地がそう言い、剣を振り下ろす。その遠くから瀧が狙いを定め、弓を放って大地をサポートしている。瑠花も魔法を放ち、英美里は傷付いた兵士たちの怪我を治し、帆高は戦えない人たちを安全な場所へ避難させている。

「あたしだけ、何もできない……」

未来はそう言い、本を握り締める。周りからはみんなが戦う音が響いてくるが、未来は体を動かせない。

「榎本!!戦え!!」

誰かが怒鳴るが、未来は体を震わせることしかできない。何もできない自分が本当の世界での自分と同じであまりにも悲しかった。

「足立さん、危ない!!」

英美里の声に未来は顔を上げる。悪魔の放った黒い光線が瑠花に向かって飛んでいくところだった。突然のことに瑠花は固まり、大地たちも動けない。

「瑠花ちゃん!!」

未来は本のページを開ける。今動くことができるのは、瑠花を助けられるのは自分だけだ。瑠花を助けたい、そう思いながら呪文を唱える。本が白く輝いた。
< 36 / 193 >

この作品をシェア

pagetop