あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「事情はエディスの体についた匂いでわかります。エディスを助けていただいたのですね。ありがとうございました」

深々と老人は頭を下げ、帆高は「いえいえ」と微笑む。エディスが「この人はこの村の村長さんだよ!名前はレオンハルトさん!」と説明してくれた。

「この村は獣と人間の間に生まれた獣人と呼ばれる者が集まってできたものです。彼らは人から差別を受けることが多く、外部の人間を嫌ってしまうのです。申し訳ありません」

レオンハルトがそう言い、再び頭を下げる。未来は慌てて「レオンハルトさんのせいではありません!頭を上げてください!」と言った。悪いのは差別をする人間の方だ。

「お礼と言ってはなんですが、今夜はこの村に泊まっていかれませんか?おいしい食事も提供いたしますし、何よりこの村の住人が人と関わる機会になりますので……」

レオンハルトにそう言われ、未来たちは顔を見合わせる。未来の中にはこの村にいてもいいのかという思いがあった。先ほどの村人たちの目が忘れられない。
< 54 / 193 >

この作品をシェア

pagetop