あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「未来ちゃんはいいことあった?」

瑠花に尋ねられ、未来は少し考えてみる。しかし、頭に浮かぶのは失敗して笑われることばかりだ。未来自身は何も持っていない。

「う〜ん。強いて言うなら、新しく馬がやって来たことかな」

「馬!かっこいい!乗ってみたいけん」

苦し紛れに行った未来の言葉に、帆高が真っ先に反応する。その目は輝いていて心からの言葉なのだと誰もがわかった。

「じゃあ、うちの牧場に遊びにおいでよ。乗馬と、牛の乳搾りと、バターやソーセージを作るしかないけど、楽しいから!」

未来がそう言うと、「私も行ってみたいな」と英美里が微笑む。笑われることがないということに、未来は安心感を覚えていた。

「……看板、あるじゃけん」

先頭を大地と共に歩いていた瀧が呟く。看板には大きく文字が書かれていた。しかし、これを読むことができるのは考古学者である帆高しかいない。

「もうすぐアーグアの街って書いてあるけん」
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