あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜
「ん?この花は何だろう……」

未来が体育館の扉を開けた時、目の前に小さな一輪の花が咲いているのが見えた。オレンジの可愛らしい花に、未来は何の花かスマホで調べる。英美里ならばスマホを見なくてもわかったかもしれない。

「ジニアって言うんだ……」

ジニアは百日草とも呼ばれ、暑い時期にも花を咲かせるらしい。そして、百日以上も花が咲き続けると書かれていた。

「花言葉は……不在の友を思う……」

未来の頭の中に、帆高たちの顔が浮かぶ。今頃はみんなそれぞれの場所で今を生きている。それぞれに学校や家族、事情があるのだ。

気が付けば未来はその場に座り、ジニアの花を写生し始めていた。花どころか、絵などまともに描いたことなどない。しかし、未来はこの絵を描きたいと思ったのだ。

「未来、何してんの?」

友達の問いに、未来は「ジニアの花を描いてる!」と答える。すると、友達はクスクスと笑い始めた。

「未来、花ってスケッチするの難しいんじゃない?」
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