モテ期を過ぎた後は寂しいけれど…
誠と 会うようになって 1ヵ月が 経つ頃。
街は バレンタインデーが 近付いて。
赤いハートの ディスプレーが 溢れていた。
「石井さん。彼氏に チョコって 渡すんですか?」
夕方 事務所で 私は 美晴に 話しかけた。
「一応ね。食べないくせに 渡さないと 拗ねるのよ。」
美晴は 顔をしかめて 答えて。
「もしかして?坂本さんも いい人できた?」
「そういうわけでも ないんだけど…」
歯切れの悪い私は 強引に 美晴に連れ出され。
誠とのことを 暴露するはめに 陥った。
「それは まずいよ。早く 区切りつけないと。」
いつも行く イタリアンで ワインを飲みながら。
私が 誠のことを 話すと 美晴は そう言った。
「区切りですか?」
「うん。友達の時間が 長すぎると 今更っぽくなっちゃうのよ。照れくさくなるし。」
「あー。そうかも。」
「でしょ?お互い 好きでも 安心しすぎるって言うか。恋人に シフトできなくなるから。早く 言った方が いいわ。坂本さんから。」
「私から?」
「男なんて 意気地がないから。こういう時は 女の方から 仕掛けてあげるのよ。」
「へぇ…さすがですね。」
「ちょうど いいじゃない。バレンタインデーだから。ちょっと 高級なチョコ 用意して。彼を 刺激してごらん。」
「高級なチョコですか?」
「そう。特別感が 大切だから。義理チョコと思われないような。」
「石井さん。すごいなぁ…恋愛マスターですね。」
私が 感心して言うと 美晴は ケラケラ笑った。