茜くんが、甘すぎて。〖短編〗
「茜くんは、ずっと私の幼なじみですよね?」
顔を伏せたまま、茜くんに問いかける。
その時、彼がはぁーと大きなため息をついた。
「冬ちゃん、俺もう限界」
「なんですか?」そう聞こうと思って、顔を上げた途端、茜くんと私の影がひとつになった。
チュッというリップ音を奏でて、私と彼の影が別れる。
なにがなんだか分からない。
心臓が大きく脈打って、血がどんどん巡って、一気に頬が熱くなる。
「俺、冬ちゃんのことを幼なじみだなんて思ったことないよ」
その一言で、なにがなんだか分からない、恥ずかしくて高揚した気持ちが一気にマイナスへと突き落とされた。
「え」
喉の奥がつんとして、目から涙が溢れてきそうだった。
もしかしたら、ずっと私のことなんて嫌いだったのかもしれない。
「冬ちゃん。俺、冬ちゃんのことがずっと好きだよ。世界中の誰よりも。どんなものより冬ちゃんが好き」
落ちた気持ちが高ぶって、一気に頂点へ駆け登る。
不思議と、私の知らない気持ちが、大きく膨れ上がっていくそんな予感がしたんだ。