破 恋

【 みかの付け足し 】

私は、会社の入社式の後、告白された。
私は舜二を社員と思っていたから
お互いをもう少し知ってからでは
ダメですか?と答えると
舜二は、なぜか大笑いをして
「よかろう」と、言った。
なんだか俺様な舜二に
初めは嫌悪がなかったわけではないが
優しくて大切にしてくれるギャップに
はまっていき、お付き合いをする事に

新人で仕事を
覚えるだけでいっぱいの私が
舜二が専務であるのを
知ったのは、付き合って一年が
経とうとした頃

その時、断りを入れたが
舜二の「無理」の一言で、今に至る。

受付に配属されてからは
あ~、この人が私の恋人か、と絶句

私と舜二の事を知っているのは
社長、副社長と莉子のみ
             以上。


莉子は、土曜日は
みかが泊まるに来ると千里に伝えて
来ないようにした。

その日は、出張の準備をした。
航空券等は、専務からみかへと
渡されて手元にある。

本当にみかと専務には
なんと言ってよいのか
それを受諾していただいた
社長、副社長もだが。

あらかた準備が済むと
みかと美月が待っている
居酒屋に向かう。

二人には、私が不在の間
受付をやってもらうことになる。

だから、せめて今日は、
私がご馳走すると言った。
三人で楽しく飲む事ができて
私は、心が軽くなった。
本当にありがとう。

日曜日には
千里は朝からやってきた。

良かった。
荷物を駅のロッカーに入れて置いて。

身体一つで動けるようにしていた。

千里は、来る度に« ごめん »と言いながら
抱き締めてくる。

何度も聞いた« ごめん »の言葉
千里知ってる?
あまりにも言いすぎると
効果ないよ。

だって、私の心には
もう、« ごめん »の言葉は
響いてこない······

私は、なにも考えたくなくて
千里とビデオをみたり
散歩に出掛けたりした。

比較的に寛げていた
夕食を食べる間では·····

夕食を済ませ
シャワーを浴びていると
話し声がする
脱衣所のドアを少し開けると
千里の声
「母さん、俺は行かないよ。
俺の彼女は莉子だけなんだから。
もう、やめてくれよ。」
と、電話を切って頭を抱えている。

私は、知らぬ顔で
「千里、シャワーする?
それとも、帰ってからにする?」
と、訊ねた。
千里は、直ぐに私を抱き締めて
「泊まっても良い?」
と、訊ねるから私が頷くと
シャワーへと行った。

千里がいない間携帯がなるが···
直ぐに止まった。

それでも私の身体は
ふるえがでて
それを両手でおさえてながら
コーヒーを入れた。

何かしていないと
どうにかなりそうで·····

千里が上がってくると
また、携帯がなる
ビクッとして
コーヒーを溢してしまい
拭き掃除をしながら····

きっとお母さんから
千里が電話にでた事を聞いて
桜田さんがかけているのだろう。

二人から交互にかかる
どうやら、桜田さんが風邪で熱を
だしているみたいで
お母さんが心配して
千里に行けと言っている。
行かないと何度も伝える千里。

鳴っては、切れ
鳴っては、切れ

「行ったら」と、言う私に
悲しい顔をして
「行かない」と、言う千里。

もう、嫌だと思い
「行って!!!」
と、怒鳴るように言った。

千里は、頭を降りながら
「直ぐに戻る。」
と、言って出て行った。

私は、ソファーに座りながら
玄関が閉まる音を耳にした。

それから、直ぐに着替えて
バックを取り
忘れ物がないか確認して
マンションを出た。
駅に向かうタクシーから
みかに、
『今から空港のホテルに入ります。』
と、LINEをした。
駅のロッカーから荷物を取り
再びタクシーに乗り
空港へと向かった。
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