破 恋

ほらっ······

「安藤、莉子は?
昨夜、安藤の所にいたんだろう?
なぜ、出社していないんだ。
なぁ、安藤。
莉子は、どこにいるんだ?」
焦りわめく千里に
「西原さん、ここは受付です。
お静かにお願いします。
その件でございましたら
後程、ご報告いたします。
それでは、いってらっしゃいませ。」
と、千里に向かい頭を下げる。

千里は、しばらく立ち止まっていたが
諦めたように足を動かした。

桜田は、野上さんが
他の営業や自分に尽かせて
千里から離している。

山田は、嫌な顔をしていたようだが
面と向かっては、何も言わなかったらしい。

定時前に千里に
近くのカフェに来るように
連絡をした。

美月には、帰るように話して。

走ってきたようで
肩で息をする千里に
座るように促した。
「安藤?」
「焦らなくても心配ないよ。
莉子は、専務依頼の出張に行ってる。」
「専務?どこへ?」
「そう、専務。
もちろん、社長や副社長も
了解済みだけど。
場所は、言えないんだ。
オフレコな案件だから。」
「オフレコ?いつ帰る?」
「どうだろう?ひと月かな?」
「····そんなに··長く·····
安藤、本当は、莉子はもう戻って
こないんじゃないか?」
「そうかもね。
私は、これ以上、
自分の大切な親友が苦しむのは
みたくないから
莉子が、良いなら
帰らなくても良いと思っているよ。」
と、言うと
はっと、顔をあげてから
直ぐに頭を垂れる千里に
段々イライラしてきて
「あんたさ、しっかりしなさいよ。
元はと言えば、あんたのせいじゃない。
バカな事しでかすから。
桜田と本当になんかあったの?
あなたのお母さんは
あなたと桜田の結婚を楽しみにしてるの?
莉子はね。
お母さんからの言葉も一理あるし
それに、あなたのお母さんが
桜田を気にいっているみたいだから
その方が良いのではないかと
泣いていたんだよ。
まったく、なんなのよ
あんた達は!!」
「莉子が気にするのは、
わかっていたけど、
もう、嘘はつきたくないから
全て話したんだ。

あの時、目が覚めたら
裸で眠る桜田が隣にいて
俺も気だるさが少しあった·····
やってないのかと
言われたら、やってない
やったのかと言われたら
やったのかな
と、わからないんだ。

だが、莉子と桜田を間違うなんて
絶対ない。

俺が、莉子以外を抱くなんて
考えられない。
だけど、憶測では莉子には
話せない。
お袋は、間違いを犯した俺を
莉子が許せるのか、と。
今は良くても長い人生に置いて
それがきっかになり
崩れるのではないかと言った。

それに汗を足らしながら
家庭菜園を手伝う桜田が
可愛いと言っていたが
俺の実家の住所を調べて
一人で実家に行くなんて
少し考えたら、
おかしいとわかるはずなんだ。
だが、お袋は、
俺が桜田にしたことを
責任とれと。
教師をやっているからか
間違ったことがダメみたいで。」
「それが本当なら
酔って千里が桜田を抱いたなら
お母さんの言ってる事も
わかるの。
まぁ、他にも桜田が
なんかお母さんに言っているかも
しれないし。
莉子の事だって。
莉子に会えば桜田なんか
眼中にもなくなるわよ。」
「安藤、莉子はまだ帰らないんだよな。」
「さっきも言った。」
「俺、明後日の土曜日に
実家に帰ってお袋と話してくるよ。」
「わかった。
何かあったら連絡して。
莉子は、携帯持っていってないから」
「ああ、リビングに置いてあった。
俺からの連絡も嫌だったのか?」
と、言う千里が可哀相になり
「声を聞けば心配になるでしょ。
だから。」
と、言うと
そうか····と、千里は言って
立ち上がり店をでようとするから
「あっ、千里
ちゃんと食べて、きちんと寝てよ。」
と、言うと
苦笑いをしながら
寂しそうに出て行った。



だが····
まさか、週末に
あんな事が起こるなんて·····
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