破 恋

目を覚ました西原に
俺も野上も会いに行った。

野上が自分と俺の事を
説明するが
西原は、わからずに
ただ、俺達に頭を下げるだけ。

西原の母親は、
前回よりはるかに憔悴していた。

西原は、自分の母親もわからずに
敬語で話をしていた。

西原の食事は、点滴から
固形物へと変わっていた。

まだ、沢山は食べれないらしいが
普通に食べれるようになれば
退院できるとの事だ。

西原は、母親に
「もう一人で大丈夫ですので
あなたもあなたの生活に戻って下さい。
教師をされていると、
お聞きしましたが。」
と、言う
母親は、
「もう少しだけ。」
と、言い
西原は、黙っていた。

記憶の問題の件は
病院側から心療内科の受診をと
進められたが
西原は受けないと
言ったらしい。

西原は、
目は覚めているが覇気もなく
生きることに意味を見出だせない
ように見える。

野上が、
「西原、待っているからな。」
と、言うが
頭を下げるだけだ。

何を考えているのか
     ·····わからない

目が覚めてから
ずっとこの状態らしい。

みかも色々話すが
聞いているのか
いないのか、わからない····と

みかは、
こんな千里を莉子に合わせて
大丈夫なのか·····と

莉子が、また傷つくのではないかと
心配していた。
< 54 / 76 >

この作品をシェア

pagetop