破 恋
みかが、私の手を取り歩き始める
誰の病院なんだろう····
社長?····それとも··知り合い?····
帰国の挨拶かな·····
マンションに戻ったら
千里に連絡をしなければ·····
私のマンションの部屋は
定期的にみかに空気の入れ換えを
頼んでいた。
北海道の家族にも
上海への出張の件は連絡をしていた。
居ない間に連絡あり
連絡がつかないと心配かけるかも
しれないと······
みかと専務は、
一つの病室の前に立ち止まる。
みかは、私の顔を見つめ
「莉子、びっくりしないでね?」
「ん?う~んと、わかった。」
と、わからずに答えると
« コンコン »
と、みかがノックをすると
女性の声で
「はい」
と、返事があった。
女性?と思っていると
みかがドアを開けて
私の背中をそっとおす
私は、そのまま前に進むと
ベッドに座る人が目に入った。
·····せん·····り·····
·····な····ぜ······?····
千里も私を見ていた。
どのくらい····
そうして····いた····のか·····
「せん···り···」
と、声をかけると
千里は、私に向けて
手を差し出しながら
瞳からポロポロと涙を溢した。
私は、たまらずに
千里のそばに駆け寄り
千里の手を取ると
千里は、その手を引き
私を抱き締めた。
私も千里の背中に手を回す···と
細い····なぜ····
私は、千里を抱き締めたまま
「千里?どうしたの?
どうして、こんなに痩せてるの?
私が黙って、いなくなったから?」
と、訊ねるが
千里は、首をふりながら
「りこっ·····りこっ····」
と、私の名前を呼ぶだけ
私が、不思議に思っていると
専務が
「西原は、手首を切って
自殺をはかったんだ。
泉さんが上海に行って
まもなくして。
傷は深かったが
神経等には問題はない。
だが、中々意識が戻らずに
つい先日目覚めたが
記憶がないんだ。
自分の名前も
仕事も、俺達の事も
自分の母親の事さえ。」
と、言われて
回りを見ると
年配の女性が立っていた。
ひどく疲れた顔をされている
きっとこの方が
千里のお母さん。
そう思うが
千里の手が気になり
「千里、私に見せて。」
と、言うと
千里は、そっと私を離して
片手で私と手を繋ぎ
包帯で巻かれた手を差し出す
私は、その手を取り
自分の頬にあて
「ごめんっ、ごめんね、千里。」
と、言うと
千里は、首を何度も横にふり
「莉子、どこにもいかないで
莉子、離れていかないで。」
と、言う。
「行かないよ。どこにもいかない。
千里、信じてあげれなくて
ごめんね。
自分の事ばかりの私でごめんね。」
と、言うと
「莉子しかいらない。
莉子以外と生きていけない。」
と、言う千里に
意味がわからないが
今は、このままでいた方が
良いと思い
千里の思うようにしていた。