破 恋

すると·····

千里のお母さんが
その日の話をしてくれた。

お母さんは、ずっと
自分を責め続けて
いたのだろう

彼女の桜田さんの嘘が
招いた事だ。

千里は、その時
どんな気持ちだったのだろうか
どんなに悲しかっただろうか

そんな千里を一人置いて

私は·····と思っていると·····

そんは私を千里が
そっと抱き締めてくれたから
千里の顔を見上げると
千里は首をふる

私が考えていたことが
わかったのかな·····だけど
「千里、ごめんね。
一人にして、つらかったね
悲しかったね。」
と、言うと
千里は、また首をふる。

そんな私達を見ていた専務が
「西原、泉さんがわかるのか?」
と、訊ねると
コクン、コクンと頷く
「名前、言えるか?」
と、言うと
顔をあげて、何を当たり前の事を
と、言いたげな顔をして
「泉 莉子です。」
と、言う
「では、この人は?」
と、みかを指すと
千里は、じっとみかをみて
フルフルと横に首をふる
「自分の名前も歳もわからないのに
泉さんの事は、わかるんだな。」
と、言い
今後どうするかを話した。

私は、千里のお母さんに
「今日は私がついても、宜しいですか?」
と、訊ねると千里のお母さんは
「宜しくお願い致します。」
と、頭を下げてくれた。

専務も
「西原さんも、
ずっと息子さんに付き添っていたのですから
ゆっくりされて下さい。
西原は、私の方で責任を持ちます。
泉さんもいますので。
何かありましたらご報告致します。」
と、言うと
「ありがとうございます。
宜しくお願い致します。」
と、力なく答え頭を下げる。
「西原の記憶が戻り
彼がどのように考え
どのようにするのか
私にはわかりませんが
私は西原の思うようにさせたいと
思っています。
桜田に対しても法的処置の
対応も準備していますし
桜田の両親にもこの事は
報告を済ませております。」
と、伝えると母親は、
驚きと落胆の顔をして
「わかりました。
息子に全てを委ねます。」
と、言い
「千里、こんな母親でごめんね。
あなたの回復を祈っているから。
そして、泉さん
すみませんが宜しくお願い致します。」
と、言い、みんなへ頭を下げて
病室を後にした。

私は、千里の手をぐっと握り
「千里、お母さん見送ってくるね。」
と、言うと不安な顔をする千里に
「ちゃんと、戻ってくるから。」
と、言い、みかに頷いてから
病室をでた。
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