破 恋

「莉子っ、何もされてないか?」
と、心配顔で近づく千里に
私は、首を横に振り
   一歩、一歩と下がる

どうして?

なぜ、ここにいるのか?

何が、どうなっているのか?

わからずにいると····

「実は·····
と、話し始める千里

「佑翔は、少し前まで
クアラ・ルンプルにいたけど
日本に戻されたんだ。
佑翔は、大学時代のサークルの後輩で
クアラ・ルンプルで再会してから
良く飲んだりしていたんだ。

そんな佑翔が結婚もしないで
独身をおうかしていることを
佑翔の両親が心配して
佑翔の父親が友人の
赤木社長に頼んだらしい。
その相手が····
泉 莉子だと、聞かされて
胸が締め付けられたよ。
で、佑翔に見合いを止めて欲しいと
頼んだのに
あいつ···〖先輩がそう言っても
莉子さんが俺を気にいるかもしれないし
わからないじゃないですか?〗
と、言ってきかなくて
専務にも連絡して止めさせて欲しいと
頼んだのに
〖お前に、そんな資格があるのか?〗
と、そこでも、言われて、飛んで来た。
莉子、いやっ、泉 莉子さん
俺を、選んでくれませんか?」
と、べらべらと話す千里に
呆気にとられて口がふらがらなかった。
が·····

「来たか?やはり?」

の声に振り向くと·····

「「専務。せんむ?」」

「なんだ?
  感動の再会には見えないが?」
「止めてくれなかったのは、
この為ですか?」
と、莉子が訊ねると
「ん?まぁ、そうなのか?
ちがうのか?」
と、言う専務に
「どういう事ですか?」
と、訊ねると専務は
「こいつ、かなり前に記憶
戻っていたんだ。
まぁ、俺にも隠していたけど
名前の呼び方でわかったんだ。

俺やみか、野上を名前で呼ぶときに。
泉さんの事は莉子だったけど。
中々、それを言わないし
泉さんに未練たらたらで
あっちで、いろんな方々から
見合いや結婚の話があるのに
事如く断り続け
あっち系の人では、なんて
噂までたつほどに。
だから、社長からの話を
通して見たんだ。
泉さん自身も結婚するつもりもない
みたいで、うちのが心配して
落ち着かないから。
少し、強引にした。
じゃ~な。
泉さん、佑翔は良い奴だよ
西原にしなくても
いいからな?」
と、言って立ち去る専務の
後姿を見ていると。
「大きな仕事を抱えていたんだ。
それが終わったら、
日本に転勤願いを出して
帰国するつもりだった。
莉子が、独身なのは
安藤や専務から聞いていたから
あっ、安藤じゃなくて
専務婦人から。
きちんとやってから·····
いやっ、ちがうな·····
莉子に会うのが·····怖かったんだ。
逃げ······だな。
専務には見透かされてる·····はぁっ。

莉子、記憶は戻った。

母さんにもクアラ・ルンプルを
でるときに連絡して話した。
母さんの所に、通ってくれて
ありがとう。
俺よりも、〖可愛い、優しい娘が
できたから、貴方は良いわ〗
って言われた。
本当に身勝手なお願いを
聞いてくれてありがとう。」
と、千里は頭を下げた。

「仕事は?」
「うん、1日だけ
休みをもらった。
ずっと、休みなしでやってきたから
1日なら、と言ってもらえた。」
「大事な時に、ばかっ」
「もちろん、仕事も大事だ
クライアントも尊重している。
だけど、どんなに頑張っても
莉子を失ったら
何にもならない。
莉子が佑翔を選んだら?
他の人を好きになったら?
と、思ったら
いてもたってもいられなくて。
もう一度だけ言わせて
泉 莉子さん、俺と結婚を前提に
付き合って頂けませんか?」
と、頭を下げる千里を
じっと、見ていた
まるで、他人事のように·····

正直、諦めていた
もう、二度と男の人を
好きになることは····ないと·····。
結婚も·····無理だと·····

でも、世の中には沢山の男の人が
いるのに、なぜ、諦めたのだろう?
現に有馬さんも素敵な人だ。

そう·····
千里と関わる事がないから
千里ともう会う事もないから
諦めたんだ。

じゃ、千里となら?
諦めないの?

あなたが、ここで断れば
二度と千里とは会う事はないだろう····
千里は、他の人と、いつかは結婚し
子供も恵まれるだろう·····

それで、良いの?
りこ、貴方は····それで?·····
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