血の舞
しばらくして、目をさます。
そこで初めて、自分が生きていて、気絶していたことを知った。
(…ここは…?)
周りを見ると、自分は建物の下にいるようだが、あたり場所が良かったのか、重くはなかった。
(いっ…!)
身体を見ると、ケガはしていたが、大きなケガはなかったようだ。
外は静かで、寝ている間に戦争が終わったと告げている。
(…良かった…!)
それでもまだ危ないと、静かに物をかき分け、外に出た。
(なっ…!)
外を見て、私は絶句した。
本当に、ここはボルテーノかと疑いたくもなる。
そこは、お祭りをやっていたなんて思いもしない、荒れ地だった。
建物は戦闘機によって儚く崩され、人はそこらじゅうに転がっている。
どうやら、生きていたのは私だけのようだ。
私はその場に崩れ、座る。
血の水溜まりがパシャンッととんだが、気にしなかった。
私は、この『人だったもの』を見たことがある。
いや、私は今日まで1日たりとも見なかったことは無かった。
私の病気…裂体病は、病に侵され始めたころには何もない。
けれど、病気が進行するにつれ、その名の通り、裂けるのだ。
皮膚も骨も内臓も何もかもだ。
そして、やがて死ぬことになる。
…無惨な姿で。
私が入院していた病院では、相部屋だった。
そのため、人が死んでいく様子が分かるのだ。
なぜ相部屋になんかしたのだろうと思ったが、それよりも自分もこうして死ぬのかと怖くなる。
人が血まみれになって裂けた身体を引きずって歩く。
それを見るのが、病院での普通だった。
でも私は、その症状がでる前に奇跡的に治り、退院したわけだ。
血だまりの中をフラフラと歩く。
爆弾でバラバラになった人、人、人、人、人人人人人人人人人人…!
「…アハハハハ…。」
もうこのときには、私の頭は狂っていたらしい。
「血が…血がぁ!アハハハハ!」
血だまりの中に手を突っ込み、水遊びをするようにすくってかぶる。
「なんて…!なんて綺麗なの!」
キラキラと血が舞う。
赤い液体が、私を包み込む。
「アハハハハ!」
大きな血だまりの中心で、クルリと一回転した。
「アハハハハハハハハ!…でも、まだ足りない…!」
近くにあった、バラバラな何かをつかみ、その中に蓄えられている赤い液体を上からかける。
「もっと…!もっと欲しい!この綺麗な湖を!さらに綺麗に大きくしたい!」
近くにあった、バラバラな何かをつかむ。
さらに近くにあったバラバラな何かをつかむ。
さらにさらにさらにさらにさらにさらにさらにさらにさらに…!
こうやって私だけの楽園を綺麗にしていき、何ヶ月が経っただろうか。
やがて、坂の上にあった家が崩れたものから見つけた、コレしか無くなってしまった。
とりあえず、食べ物に関しては、ボルテーノに落ちていたパンやらなにやらで生きていた訳だが…。
美しき液を上からかぶる。
「…アレ?私の服ってこんなに赤かったっけ?まあいいや。」
湖は広場を覆うくらいに大きくなった。
でも、私の楽園にはまだまだ足りない。
湖からあがり、私はナイフを持って街を出る。
すぐそこを通りがかった、青年にナイフを突き通す。
「なっ…!」
赤い液体が宙を舞った。
「おっと、いけない。少しでも漏らさないようにしないと…。」
ズリズリとひとつずつボルテーノへ運んでいく。
「…アハッ!まだ沢山あるんじゃない!」
運んできたソレに刺して、抜く。刺して、抜く。刺して刺して刺して刺して抜いて抜いて抜いて抜いて抜いて…!
「美しい!こんなに綺麗なものが他にあるのかしら!」
ボルテーノに引っ越してきて良かった、と私は神に感謝する。
ボルテーノは、私の楽園。
ボルテーノは、私だけの楽園。
ボルテーノは、私のためだけの楽園。
ボルテーノは、私のためだけに用意された楽園。
「アハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハ!」
楽しい!本当に楽しい!
なんて楽しいの!怖いくらい楽しい!
「まるでここはレストランね!」
ボルテーノが血を運び、私が調理をする。
シェフは私ひとりだけ。
レストランには、料理と悲鳴の演奏しか無いけれど。
それでも毎日、客が訪れる。
「今日のメニューはあなたです。」
…本当に、何も無くなってしまった。
客も消え、楽園は封鎖するしかないと思ったときに気づく。
自分の身体から、真っ赤な血が流れていることに。
「…アハッ!」
本当に美しい。
荒れ狂った私の血も!
「さあ!最後の祭…いや、宴の時間だよ!」
思いきり、自分の身体にナイフを突き刺す。
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!アハハハハ!イタイ!イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!アハハハハハハハハ!」
自分の声を歌にして。
自分の血をワインにし。
赤い湖の真ん中で。
そして舞う。
「アハハハハハハハハ!イタイイタイイタイ!アハハハハ!イタイイタイイタイイタイイタイ!」
いつまでも、何時までも、舞い続ける。
ワタシノラクエンニ、オワリハナイ。
そこで初めて、自分が生きていて、気絶していたことを知った。
(…ここは…?)
周りを見ると、自分は建物の下にいるようだが、あたり場所が良かったのか、重くはなかった。
(いっ…!)
身体を見ると、ケガはしていたが、大きなケガはなかったようだ。
外は静かで、寝ている間に戦争が終わったと告げている。
(…良かった…!)
それでもまだ危ないと、静かに物をかき分け、外に出た。
(なっ…!)
外を見て、私は絶句した。
本当に、ここはボルテーノかと疑いたくもなる。
そこは、お祭りをやっていたなんて思いもしない、荒れ地だった。
建物は戦闘機によって儚く崩され、人はそこらじゅうに転がっている。
どうやら、生きていたのは私だけのようだ。
私はその場に崩れ、座る。
血の水溜まりがパシャンッととんだが、気にしなかった。
私は、この『人だったもの』を見たことがある。
いや、私は今日まで1日たりとも見なかったことは無かった。
私の病気…裂体病は、病に侵され始めたころには何もない。
けれど、病気が進行するにつれ、その名の通り、裂けるのだ。
皮膚も骨も内臓も何もかもだ。
そして、やがて死ぬことになる。
…無惨な姿で。
私が入院していた病院では、相部屋だった。
そのため、人が死んでいく様子が分かるのだ。
なぜ相部屋になんかしたのだろうと思ったが、それよりも自分もこうして死ぬのかと怖くなる。
人が血まみれになって裂けた身体を引きずって歩く。
それを見るのが、病院での普通だった。
でも私は、その症状がでる前に奇跡的に治り、退院したわけだ。
血だまりの中をフラフラと歩く。
爆弾でバラバラになった人、人、人、人、人人人人人人人人人人…!
「…アハハハハ…。」
もうこのときには、私の頭は狂っていたらしい。
「血が…血がぁ!アハハハハ!」
血だまりの中に手を突っ込み、水遊びをするようにすくってかぶる。
「なんて…!なんて綺麗なの!」
キラキラと血が舞う。
赤い液体が、私を包み込む。
「アハハハハ!」
大きな血だまりの中心で、クルリと一回転した。
「アハハハハハハハハ!…でも、まだ足りない…!」
近くにあった、バラバラな何かをつかみ、その中に蓄えられている赤い液体を上からかける。
「もっと…!もっと欲しい!この綺麗な湖を!さらに綺麗に大きくしたい!」
近くにあった、バラバラな何かをつかむ。
さらに近くにあったバラバラな何かをつかむ。
さらにさらにさらにさらにさらにさらにさらにさらにさらに…!
こうやって私だけの楽園を綺麗にしていき、何ヶ月が経っただろうか。
やがて、坂の上にあった家が崩れたものから見つけた、コレしか無くなってしまった。
とりあえず、食べ物に関しては、ボルテーノに落ちていたパンやらなにやらで生きていた訳だが…。
美しき液を上からかぶる。
「…アレ?私の服ってこんなに赤かったっけ?まあいいや。」
湖は広場を覆うくらいに大きくなった。
でも、私の楽園にはまだまだ足りない。
湖からあがり、私はナイフを持って街を出る。
すぐそこを通りがかった、青年にナイフを突き通す。
「なっ…!」
赤い液体が宙を舞った。
「おっと、いけない。少しでも漏らさないようにしないと…。」
ズリズリとひとつずつボルテーノへ運んでいく。
「…アハッ!まだ沢山あるんじゃない!」
運んできたソレに刺して、抜く。刺して、抜く。刺して刺して刺して刺して抜いて抜いて抜いて抜いて抜いて…!
「美しい!こんなに綺麗なものが他にあるのかしら!」
ボルテーノに引っ越してきて良かった、と私は神に感謝する。
ボルテーノは、私の楽園。
ボルテーノは、私だけの楽園。
ボルテーノは、私のためだけの楽園。
ボルテーノは、私のためだけに用意された楽園。
「アハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハ!」
楽しい!本当に楽しい!
なんて楽しいの!怖いくらい楽しい!
「まるでここはレストランね!」
ボルテーノが血を運び、私が調理をする。
シェフは私ひとりだけ。
レストランには、料理と悲鳴の演奏しか無いけれど。
それでも毎日、客が訪れる。
「今日のメニューはあなたです。」
…本当に、何も無くなってしまった。
客も消え、楽園は封鎖するしかないと思ったときに気づく。
自分の身体から、真っ赤な血が流れていることに。
「…アハッ!」
本当に美しい。
荒れ狂った私の血も!
「さあ!最後の祭…いや、宴の時間だよ!」
思いきり、自分の身体にナイフを突き刺す。
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!アハハハハ!イタイ!イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!アハハハハハハハハ!」
自分の声を歌にして。
自分の血をワインにし。
赤い湖の真ん中で。
そして舞う。
「アハハハハハハハハ!イタイイタイイタイ!アハハハハ!イタイイタイイタイイタイイタイ!」
いつまでも、何時までも、舞い続ける。
ワタシノラクエンニ、オワリハナイ。